2007年9月2日日曜日

大切に 八曽今井湿地のシラタマホシクサ

まずは、八曽の亀割(今井)駐車場に到着。靴を履き替え、管理車道を登ります。途中の栗の木には、青い栗がいっぱい連なっていました。昨年は、今にも木から落ちそうなこげ茶色の実をのぞかせた栗が、9月後半に入ってから見受けられました。


この管理車道沿いには、栗の木が何本も有ります。今日の目的の今井湿地は、この管理車道から比較的近いところにあります。去年は、栗が熟した時期には、地元の今井地区のおばあちゃんが栗拾いに来ていました。

さて、今井湿地にも木道が設置され、湿地を訪れるときは、湿地保護のため、その木道以外は決して通ってはいけません。



しかしながら、その木道は、所々朽ち果て、ヌルヌルとして足場が悪く、特に入り口付近はとても滑りやすく、細心の注意をはらって歩を進める必要があります。藪漕ぎに近い状態でしばらく進むみます。





ほどなくすると、視界が開けます。目指すシラタマホシクサは、この木道の終点付近に自生しています。






シラタマホシクサの名前の由来は、白い小さな玉のような花が群生している様子が、夜空にちりばめた星のように見えることからきています。(画像は、シャッタースピードを速く設定し、背景を暗くして、シラタマホシクサの白を強調しています。)





画像は、木道の終点から入り口方向を写したものです。湿地は、片流れの斜面になっています。この画像の左下部分に、シラタマホシクサが群生しています。






ホシクサ科ホシクサ属シラタマホシクサ(Eriocaulon nudicuspe Maxim.)は、絶滅危惧II類に分類される湿地性草木です。





日本のしかも、東海地方の固有種であり、希少生物が数多く生息する湧水湿地のシンボルの一つです。近年、農地整備や宅地開発等や里山の管理放棄等による湧水湿地の消失や環境の変化に伴い、個体群の減少や分断化が進んでいます。

(ところが、宮崎県でほとんど差異のない個体の自生が見つかっているということが言われています。ただ、今日現在確認できる範囲で、レッドデータブックの中でシラタマホシクサの記述があるのは、愛知、岐阜、三重、静岡のみとなっています。)

開花時期は、8月末~10月上旬。一年草で、細い緑の茎の先につく花の集まりは、白い細かい毛に覆われたコンペイトウのような形、名前どおり星をちりばめたような6~8mm程のかわいい花です。日当たりの良い酸性土壌の湿地に群生して生えます。

周伊勢湾地域は、湧水が随所に見られ、それに続く斜面や谷底平野の流水面に湿地が形成されています。


これら湧水は極貧栄養で比較的低温で、土壌層が存在せず、砂礫が裸で露出しているという特異な湿地です。今井湿地もその特徴を良く現しており、その要素が直に観察できる貴重な場所です。よく見ると、砂礫からじわっと水がしみ出しています。


よく知られた所では、豊橋市の葦毛湿原、豊田市の矢並湿地などがあります。今井湿地は、尾張地方最北端にある湿地です。



偶然、シラタマホシクサにハッチョウトンボ(メス)が留まっているところに出くわしました。





シラタマホシクサは、「東海丘陵要素植物」の一つです。「東海丘陵要素植物」は、東海地方を代表する植物で、わたしたちの手で残していくべき宝です。シラタマホシクサ、シデコブシ、マメナシ、ヒトツバタゴ、ハナノキ、モンゴリナラ、ヘビノボラズ、ナガボナツハゼ、クロミノニシゴリ、ミカワバイケイソウ、ウンヌケ、トウカイコモウセンゴケ、ナガバノイシモチソウ、ミカワシオガマ、ヒメミミカキグサの15種類があります。

「東海丘陵要素植物」は、祖先となる種が地球の歴史の中で様々な変化を経験した結果、現在の地域で見られるようになったものです。この地に適応して誕生した種類もあれば、古い時代から生き残ってきた種類もあります。

東海丘陵要素植物の多くがレッドデータブックで絶滅危惧種に選定され、犬山市の「ヒトツバタゴ自生」のように、国などの天然記念物に指定されているものがあります。長年生き延びてきた植物たちが、人の手によって絶滅しないように、みんなで考え、種を絶やさないことが人への課題として求められています。



さて、話は変わって、八曽の今井湿地を源流の一つとしているのが「八曽滝」です。湿地から流れ出る川をたどっていくと、小さな滝があり、途中で別の川と合流します。



さらに下流へと向かうと、行き止まり。八曽滝の滝口に着きました。八曽滝のすぐ上には小さな滝と滝壺があります。



画像右中央の滝壺の上部から、八曽滝へと水が流れ落ちていきます。近くで写真を撮りたかったのですが、雨上がりで、足場が悪く、冒険することはできませんでした。



帰りは、そのまま川を元の方角へと上り、遊歩道にたどり着いたら、八曽の管理車道まで戻りました。


やけにヘリコプターの音が聞こえるので、管理車道の支線の先にある展望台へと向かうことにしました。この展望台には、ヘリポートがあり、ヘリコプターが訓練しているかもしれません。 (八曽の展望台は黒平山(八曽山)の廃寺跡探訪(別ウィンドウ)をご覧ください。)


このあたりは、平成6年に大規模な山火事があり、それを契機に展望台兼ヘリポートが整備されました。



行ってみると、案の定ヘリが訓練をしていました。ヘリコプターの所属は不明ですが、ヘリポートでホバリングをしては、飛行、旋回これを繰り返していました。後ろには、黒平山(八曽山)が見えます。



平成6年の林野火災の時は、ヘリコプターが巨大なバケツを釣り下げ、入鹿池で水を汲んでは、火災現場に散水していました。また、地上では、消防署、消防団がポンプ車を連ね、水をくみ上げ消火にあたっていました。さらに、背負いのジェットシューターに水を入れ担いで、消火活動を行っていました。この火事の原因は、心ないハイカーのたばこの火の不始末と言われています。さすがに、今は、そのようなふとどき者は居ないと信じています。

最後になりますが、湿地を守るには、湿地の保全だけでは不十分です。まわりの環境が変われば、湿地も変わります。湿地の保全には、そこにある里山全体を保全するよう、皆が協力し、努力していくことが大切です。